朝起きても疲れている? 自分では気づきにくい歯の食いしばり
2026/08/14
「朝起きたときから身体がしんどい」
「首や肩がいつも張っている」
「顎のまわりが痛い」
「歯医者さんで歯がすり減っていると言われた」
こうしたお悩みを伺ったとき、私が一つの可能性として考えるのが、歯の食いしばりです。
ところが、実際に「食いしばっていますか?」と尋ねても、「自分ではよく分かりません」と答えられる方は少なくありません。
食いしばりは、自分では意外と気づきにくいものです。
本来、睡眠は身体を休ませるための時間です。それなのに、朝起きた時点ですでに疲れている、全身に力が入っている、むしろ起きて活動しているうちに身体が楽になってくる。
そんな方をみていると、食いしばりが関係していることがあります。
食いしばりは自分では気づきにくい
顎に痛みがあるなど、はっきりとした症状がなければ、普段の生活の中で「自分は歯を食いしばっているかもしれない」と考える機会はあまりありません。
歯ぎしりの場合は、一緒に寝ているご家族やパートナーから「寝ているときに歯ぎしりをしているよ」と指摘され、初めて気づくこともあります。
一方、音を立てずに噛みしめている場合には、周りの人にも分かりにくいことがあります。
当院では、朝起きたときの身体のつらさや顎の痛み、全身に力が入っている感じ、首や肩の強い張りなどがある場合に、食いしばりの可能性も考えます。
実際に身体をみるときには、側頭部や顎の筋肉の緊張なども確認します。
舌の縁についた歯の跡を見ることもありますが、それだけで食いしばりがあると判断するわけではありません。あくまで身体全体をみるための一つの参考です。
集中しているとき、呼吸はどうなっていますか?
当院には、絵を描く方、刺繍や切り絵など細かな制作をされる方をはじめ、アーティストの方も来院されます。
そうした方の身体をみていると、制作に集中しているときに呼吸が浅くなり、身体に力が入っていることがあります。そして、その中で食いしばりがみられることもあります。
カメラマンの方でも似たことがあります。
シャッターを切る瞬間、身体を動かさないように無意識に息を止め、顎にも力が入っている。
本人にとっては作品をつくるための自然な動作なので、それが「癖」だという自覚はほとんどありません。
もちろん、すべてのアーティストやカメラマンに当てはまる話ではありません。
ただ、何かに集中しているときほど、自分の身体にどれくらい力が入っているのか分からなくなることがあります。
意識が先行して、身体が置いていかれているような感じです。
今、上下の奥歯はくっついていますか?
私が患者さんによくする質問があります。
「口を閉じたとき、上下の奥歯はくっついていますか? それとも離れていますか?」
リラックスした状態では、上下の歯の間にはわずかな隙間があります。
私はこれを説明するとき、両手を上げて鉄棒にぶら下がるような格好をして身体の力を抜き、「このとき、下顎はぶらーんと垂れ下がっているんですよ」と実際にお見せすることがあります。
まずは今、ご自身の奥歯を確認してみてください。
何も食べていないのに、上下の歯が触れていないでしょうか。
そして、仕事をしているとき、スマートフォンを見ているとき、家事をしているとき、何かに集中しているときにも、ときどき確認してみてください。
意外なところで、自分が顎に力を入れていることに気づくかもしれません。
まず「気づく」ことから始める
食いしばりが気になる方に私がお伝えしているのは、まず自分が食いしばっていることに気づくことです。
上下の奥歯が触れていることに気づいたら、そっと離してみる。
またしばらくして気づいたら、離してみる。
その繰り返しです。
人は、自分で気づいていないことを変えるのは難しいものです。
例えば、食事中に肘をつく癖や、食べるときに音を立てる癖も、自分ではなかなか気づかないことがあります。誰かに言われたり、自分でふと気づいたりして、初めて「こんな癖があったんだ」と分かります。
食いしばりも、それと少し似ています。
気づいていないことを変えるのは難しい。
でも、気づけば、変わることができる可能性が生まれます。
食いしばらないように頑張るのではなく、まずは自分の身体がどんなときに力んでいるのかを知る。
そこから始めてみてはいかがでしょうか。
