2026/08/21
ぎっくり腰は本当に突然起こる?
「重いものを持ち上げた瞬間、腰に激痛が走った」
「椅子から立ち上がろうとしたら、突然動けなくなった」
ぎっくり腰は、その瞬間に突然起こったように感じることが多いものです。
きっかけもさまざまで、ジムでベンチプレスをしたり、重りを使ってスクワットをしたりと、腰に大きな負荷がかかったことが分かりやすい場合もあります。
一方で、リモコンを取ろうと手を伸ばしたとき、椅子から立ち上がったとき、あるいは咳やくしゃみをしただけで、強い腰の痛みが出ることもあります。
「たったこれだけのことで、どうして?」
そう思われる方も少なくありません。
コップの水があふれるように
私がぎっくり腰の方にお話しするとき、よく「コップの水」に例えることがあります。
身体に疲労や緊張が少しずつ積み重なっていく状態を、コップに水がたまっていく様子に例えてみます。
コップに少しずつ水がたまっていき、いっぱいになっても、あふれるまでは何も起こりません。
そして最後の一滴が加わった瞬間、水があふれます。
ぎっくり腰も、それに似ているように感じることがあります。
リモコンに手を伸ばす、立ち上がる、咳やくしゃみをする。
その動作そのものが大きな負担だったというより、それまでに身体の疲労や緊張が積み重なっていて、たまたまその動作が「最後の一滴」になったと考えられることがあります。
「あの動作が悪かった」とは限りません
ぎっくり腰になった方から、
「あのときリモコンを取ろうとしたのが悪かったんでしょうか」
といった話を聞くことがあります。
痛みが出た瞬間ははっきりと覚えているので、その動作に原因を求めたくなるのは自然なことだと思います。
けれども、私は「リモコンに手を伸ばしたことが悪かったわけではないですよ」とお話しすることがあります。
その動作をしなければ、そのときは痛みが出なかったかもしれません。
ただ、すでにコップの水がいっぱいになっていたとすれば、別の何気ない動作がきっかけになっていた可能性もあります。
大切なのは、痛みが出た瞬間だけではなく、そこに至るまで身体がどんな状態だったのかを見ることだと考えています。
前から疲れていたこともあれば、気づいていないこともあります
ぎっくり腰になった方にお話を伺うと、「そういえば最近、かなり疲れていました」とおっしゃることがあります。
以前から腰の張りや痛みがあっても、「いつもの腰痛だから」と気にせず過ごしていた方もいらっしゃいます。
一方で、腰にはまったく不調を感じていなかったという方もいます。
人の身体は、同じ状態が続くと、その状態に少しずつ慣れていきます。
そのため、疲労や身体の緊張があったとしても、必ずしも本人がそれを「つらい」と自覚しているとは限りません。
だから、自覚がなかったからといって、身体に疲労や緊張がなかったとは限りません。
腰だけを見るとは限りません
ぎっくり腰で来院された場合も、当院では痛みが出ている腰だけでなく、骨盤まわりや臀部、脚、背中など、身体全体の状態を確認します。
痛みが出た場所だけではなく、その方の身体にそれまで何が積み重なっていたのか。
そこまで含めて身体をみることを大切にしています。
ぎっくり腰になった「その瞬間」だけを責めない
ぎっくり腰になると、
「あの荷物を持たなければよかった」
「あんな姿勢をしなければよかった」
と、痛みが出た瞬間の行動を後悔してしまうことがあります。
でも、その動作だけが悪かったとは限りません。
コップの水がいっぱいになっていたところに、たまたま最後の一滴が落ちただけかもしれません。
だからこそ、痛みが出た瞬間だけを見るのではなく、その前に自分の身体がどんな状態だったのかにも、少し目を向けてみてください。
最近、少し無理をしていなかったか。
疲れているのに頑張りすぎていなかったか。
身体からの小さなサインを、「いつものこと」と見過ごしていなかったか。
ぎっくり腰になったことも、何度も繰り返していることも、一度自分の身体に目を向けるきっかけになるのかもしれません。
どうか、ご自身の身体も大切にしてあげてください。
